<以下改訂中>
◆ 前回の方法で作成した7wt%のLHPCを含む水酸化ナトリウム水溶液(濃度8%)をガラス板に載せた厚さ1㎜の塩化ビニール枠内に流し込んで一定の厚さにひろげ、凝固再生浴(硫酸10% + 硫酸ナトリウム20%)中に浸しました。得られた高膨潤度のフレッシュゲル膜(FG)はLHPCの9倍程度の水を含んでいます。
 下図はFGの広角X線回折(WAXD)図(Through View & Edge View)です。測定中の水分の蒸発を防ぐため試料(0.8mm×10㎜の束)はAl箔で包んでいます。

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◆ 広角側の鋭いアークはAl箔に由来しています。その低角側(2Θ=28°付近)の強い散漫な散乱は水分子に由来します。水による散乱環の低角側には(110)面に由来する鋭い回折環が検知されています。(1-10)面が面配向していると赤道付近に(1-10)アークが存在するはずですが検知されていません。FGでは高膨潤状態であるためLHPCの結晶は全体として無配向です。

◆ FG膜を凍結乾燥して破断し、その断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を測定しました。下図はその結果です。

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◆ 上図が示すように凍結乾燥したFG膜では厚さが0.2~1μm程度の超薄膜が0.5~10μmの孔(ボイド)を包み込んだような多孔構造が3次元的に広がっています。後で説明しますがこの超薄膜では(1-10)面が平行に選択的に配向しています。膜の断面において超薄膜は全体として無配向状態であるためWAXD図が示すようにLHPCの結晶は無配向状態です。
 孔のサイズは表面近くでは小さく、内部では大きいようです。表面近くでは凝固・再生反応が速く進行するためと説明できます。

◆ 下図は凍結乾燥したLHPCのFG膜を凍結乾燥して測定したWAXD図です。(a)はEdge View(X線を膜面に平行に入射)、(b)はThrough View(X線を膜面に垂直に入射)です。

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◆ 凍結乾燥したので水による散漫散乱は検知されていません。(a)(Edge View)では弱い(1-10)面に由来する回折環が存在しています。SEM写真が示すように上述の超薄膜[(1-10)面が膜面に平行に選択的に配向]が無配向状態であるためです。
 その外側の2Θ=20°付近には[(110)+(200)]面に由来するブロードな回折環も検知されています。

ミクロラボΠSABAE TOSHISADA TAKAHASHI(高橋利禎)
投稿日:2025年5月11日
改訂日:2025年月日